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早稲田大学11号館

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早稲田大学11号館の正面

早稲田大学11号館は、過密化するキャンパスの再整備を目的に、創立125周年記念事業の一環として計画された。設計では歴史あるキャンパスの記憶や伝統を継承し、早稲田大学の独自性を一層強める教育研究環境の創出を目指した。

人の記憶というものは必ずしも細部を忠実に再現することで喚起される訳ではなく、ピントのぼやけた写真からでも読み取れるような曖昧な輪郭や素材感・色といったものと深く結びついているのではないか、と考えた。ここでは、既存の校舎群に共通する基壇・中間・頂部からなる建築様式を参照しながらも、スケールの違いを解消するため、様式の解釈と再定義を行い、キャンパスの風景をつなぎあわせることを意図した。基壇と中間部の接点となる4階部分には、山西黒水磨きによるボーダーを設け、既存の校舎群の高さを暗示している。

材料の選定にあたっては、均質な表情になりがちな今日の建築に対して、かつての職人の手の痕跡や、製法上の理由による不均質さのようなものが表現できないか、と考えた。基壇ならびにコアにはハンドメイドスクラッチタイルを採用した。還元焼成によって色調に幅を与えるとともに、3種類の厚みの異なるタイルをPC版に打ち込むことによって、深い陰影を生み出している。中間部にはアーキテクチュラルコンクリートを採用した。表面にブラスト処理を施し、見る角度や時間帯によって表情が変化するよう工夫している。頂部では特殊面状の押出成型セメント板を用いて、キャンパスに連続する甍を表現している。

「工業製品」と「不均質さ」は一見相反するものであるが、このプロジェクトでは「製品」の管理精度をこれまで以上に高めることにより、意図的に「不均質な製品」をつくり出すことを試みた。その結果、これまでPCaでは表現が困難とされてきた表現の一端が具現化できたと考えている。

株式会社 山下設計
水越 英一郎

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