中之島セントラルタワー

- ●所在地
- 大阪市北区中之島2丁目2-7
- ●竣工時期
- 2005年8月
- ●規模
- 延床面積/72,921m²
地下2階/地上28階
高さ/142m - ●PC仕上げ・仕様
- 花崗岩打込PC版
- ●設計
- 株式会社 日建設計
雑然とした街並みばかりが目に付く日本の都市の中で、歴史と風格を残しながら調和の取れた景観を維持する中之島地区は、きわめて稀有な例といえる。 辰野金吾の設計による日本銀行旧館、野口孫市の設計による大阪府立図書館といった歴史的建築物が残る一方、大阪市役所、日本銀行大阪支店などの重要な建築物が古い建物と絶妙なバランスで調和し、魅力ある街並みを形成している。中之島の南北を流れる土佐堀川と堂島川は、水の都大阪を今に伝えるとともにプロムナードが整備され、「水と緑と光」にあふれた公園都市を演出している。この由緒ある環境にあって、風景に溶け込み、願わくはその魅力を高める建築とすることが最大のテーマであった。
建物全体のイメージは、落ち着いた環境と調和する堅実で安心感のあるデザインとし、外装材も周囲の建物と同じ色調の花崗岩貼りとした。隣接する建物と壁面線をそろえると共に、建物の輪郭を矩形の相似形とし、街並みとの連続性を意識した。その一方、テナントビルとしての競争力と存在感を示すため、隣接する建物の約1.5倍の高さ(142m)の超高層ビルとしている。
外観上のもうひとつの特徴は、建物の足元を大きく開放したことである。建物全体を13m地上に持ち上げ、足元を巨大なピロティーとし、開放性を高め、隣接する中之島プロムナードの水と緑が敷地内に流れ込んでいく構成とした。
建物内部は、スケルトン&インフィルの思想を徹底している。テナントビルとして100年以上の長期にわたって高い競争力を維持できるよう、容易に変更できない外装・構造・は、堅牢でゆとりのあるものとする一方、設備はフレキシビリティーと更新のしやすさを追及した。
耐久性の高い花崗岩打込PC版を基調とした外装は、基準階においては3層一連の縦連窓とし、垂直性を強調した伸びやかなデザインとした。また、PC柱版にはガラス清掃用ゴンドラのガイドレールを打ち込み、見付75mmのスリットを設けて柱版と梁版を明確に分割し、梁版には汚れ防止のためのアルミ大型フィンを設けるなど、陰影のある窓廻りとした。最頂部においては、柱型の間を見付500mmのT字型花崗岩打込PC版にて更に細かく分割し、より深い表情のスリットを設けることでビル全体のシルエットを引き締めている。また、このスリット下部に照明を設置し夜間にはやわらかくライトアップすることで繊細な表情を創り出している。
低層部4隅のメガ柱は、最大で巾約2m、高さ約6mのPC版を、通常であれば巾約20mmとなるジョイント目地を、等圧工法を守りつつ石目地と同じ8mmにて取り付け、量感ある基壇を形成している。
株式会社 日建設計
宮川 浩、吉田 知弘