慶應義塾大学 日吉新研究室棟(来往舎)

- ●所在地
- 神奈川県横浜市港北区日吉
- ●竣工時期
- 2002年1月
- ●規模
- 延床面積/18,606.28m²
地上7階
高さ/30.95m
- ●PC仕上げ・仕様
- バルコニー部 :
アクリルシリコン樹脂吹付(ゆず肌)
コーナー部 :
せっ器質小口タイル(ラフ面)打込 - ●設計・施工
- 清水建設株式会社
新研究室棟は、日吉キャンパスの環境特性を生かした、わが国における教養研究の発信の基点となる研究センターである。塾内外の研究者による活発な「交流と協働」によって教養研究の新しい方向性をさぐる先駆的施設となっている。
アトリウムを中心にシンポジウムスペースやプロジェクト室と200室に及ぶ個室が設けられている。独立柱で高層部を浮遊させ、「交流の場」として、グランドフロアをピロティとして開放している。
高層部の外観は、メンテナンス動線と日除けを兼ねた1.2mの奥行きを持つ、彫りの深い格子状の形状としている。西日に対しても有効に働くように縦リブを有し、各個室は、間口3mの大きな開口を持ちながら、日射負荷の少ない室内環境を実現している。この縦リブPCは、バルコニーの排水経路を確保するため、逆L型の上部に排水パイプを打ち込み、PC背面に沿って雨水を流す機能をもたせている。さらに縦横のPCの先端を斜めにし、先端部の見付けを50mmとすることで、軽快な表情を見せる工夫としている。水平部には、アルミ型材の水切りを設置し、雨水の汚れ防止を行っている。
コーナー部に張出したPCは、ラフ面状のせっ器質小口タイルを打ち込んでいる。ボリューム感を出すために高さ3.8m、奥行き2.3m、見付け巾1.3mのJの字型大型PCとしている。これを実現させるため回転ベット式型枠を用いて製作を行っている。まず、先端部を先行打設し、回転させて平らな面を打設することにより、コーナーにジョイントのない重厚な塊としている。
新研究室棟は、太陽光発電・雨水再利用・水蓄熱・自然通風や樹木の保存、残土再利用の舗装材など自然環境へも配慮した、21世紀の学塾の原点をさぐるシンボル施設を実現させている。
清水建設株式会社 設計本部
吉田 郁夫